近年、「なんとなくだるい」「体が重い」「体が冷える」というような、西洋医学では病名のつけられない身体的な不調を訴える人々が増加し、医師の間でも東洋医学に対する関心が高まっています。
東洋医学の代表である【漢方】は、自分自身の自然治癒力を高めるための治療法で、不調の原因になっているものを突き止め、その原因そのものを改善することで、病気を未然に防ぐことができるのです。
今回は【冷え症】を改善するための、あなたの症状別でみる体質の改善方法をご紹介します。
項目は以下の通りです。
01. 冷えの改善で免疫力があがる
02. 漢方の考え方
03. 症状から体質を知ろう
04. 体質別冷え性を改善するポイント
05. 冷えを改善して免疫力をあげよう
冷えの改善で免疫力があがる
一般的に【冷え性】は体質ということで片付けられることが多く、病院などでは、治療の対象外となることが多いですよね。
そのため、冷え性で悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
しかし漢方では、冷えは【気】や血の巡りを悪くし、治療すべき重要な症状と考えられています。
冷えがあると体の痛みや、月経痛・不妊、めまいなどの症状を引き起こすだけではなく、体を守るための【免疫力】も低下してしまします。
免疫力が低下することは、自分自身の【自然治癒力】を下げてしまうことなのです。
この【免疫力】を高めるには〈体温を上げること〉がとても効果的です。
私たちの免疫力に欠かせない免疫細胞は血液の中にいます。
この免疫細胞の働きは、身体の体内深部温度が37.2度以上のとき最も活発に活動しますが、36度未満でとても弱くなるのです。この体内深部温度を体温計で測ると出てくる皮膚温度にすると、36.5度以上です。
皮膚温度が、36.5度以下で体温が下がり、血行が悪くなると、免疫細胞は体内に異物を発見しても素早く攻撃できないのです。
免疫力は、体温が1℃下がると30%低下し、逆に1℃上がると、最大5~6倍アップするともいわれ、体温を上げることの重要性がよくわかります。
このように、冷え性を解消し免疫力を上げることで、冷えからくる様々な症状を改善できるのです。
また、漢方の考え方では、冷えを改善することは【心】と体の不調を防ぐことにも繋がるとされています。
そのため、冬だけではなく夏でも体を冷やさないように常に意識する必要があります。
漢方の考え方
漢方では、人の体には【気】【血】【水】の3つの要素が巡っていると考えられています。
【気】は、生命エネルギーのことで、まさに元気の〈気〉がこれにあたります。気は生きる力の元になるエネルギーで、心身の活力、病気に対する免疫力が当てはまるのです。
目には見えませんが、日中は体表を巡って体を守り、夜は体内を巡って体の不具合のある場所を修復していると考えられています。
また、気は体の機能そのもののことなので、体を動かす・食べ物を消化する・血液が循環するのも全て気の働きとされています。
精神的なストレスなどにより、気の巡りが悪くなると、血や水の流れまで悪くなり、月経不順や胃痛、肩こりなどの症状が現れます。
また、体力がない・風邪をひきやすい・胃腸が弱いなども、気の不足によるものだとされているんです。
【血】は、全身に栄養を送る血液のことで、体に必要な栄養源を全身に供給しています。そして、血は気により全身に巡らされていると考えられています。また栄養だけではなく、私たちの生命維持に欠かせないホルモン物質も運んでくれるのです。
さらに、血は思考の源とされ、血が足りていると精神が安定し、足りなくなると精神が不安定になり、記憶力が低下するとされています。
【水】は、全身に潤いを与える液体です。体の中のリンパ液や唾液、汗、尿、涙などさまざまな液体がありますが、これらの血液以外の水分のことを示しています。
また、水は血の原料になり、内臓や髪、筋肉を潤し、関節の動きを滑らかにするのです。この水が不足すると、肌や髪のカサつき、口が渇く、ドライアイ、関節痛など、様々なトラブルがおこり、水の流れが滞るとむくみを引き起こします。
気・血・水は、互いにバランスを取りながら全身を巡っています。漢方では、どれかが不足したり循環が滞ると体に不調が生じると考えられています。
症状から体質を知ろう
では、あなたの冷えの症状からタイプを明確にしていきましょう。
■ 手足の先が冷える
■ 唇が紫色
■ しもやけやあかぎれができやすい
■ 手足のしびれ、ひりつきがある
■ 肌が乾燥しやすい
■ めまい・立ちくらみがする
■ 血圧が低い、貧血ぎみ
■ 月経が遅れがち
⇨血虚タイプ
■ 下半身が冷える
■ むくみがでやすい
■ 関節が冷えて痛む
■ めまいがする
■ 体が重だるい
■ おなかがチャポチャポいう
⇨水滞タイプ
■ おなかと手足が冷える
■ 下痢しやすい
■ 食欲がない
■ おなかがしくしく痛む
■ 顔色が青い
■ 胃腸が弱い
■ むくみやすい
⇨エネルギー不足(脾)タイプ
■ 全身が冷える
■ 足腰が冷えてだるい
■ 疲れが抜けない
■ トイレが近い
■ むくみやすい
■ 夏でも冷えやすい
■ 汗をかきにくい
■ ふらつく
⇨エネルギー不足(腎)タイプ
体質別冷え性を改善するポイント
あなたの体質タイプがわかったところで、
体質タイプ別の冷え性を改善するポイントをご紹介していきます。
【血虚タイプ】
体内の血の巡りが悪くなり、血液が不足することで起こる冷えの症状です。血液が末梢血管まで届きにくいので、寒いとすぐに手足が冷たくなります。
※改善のポイント
血液不足を補う食材として、
・赤い食材(にんじん・カツオのような赤身の魚・赤身の肉やレバーなど)
・黒い食材(黒豆・黒ごま・プルーン・レーズン・黒きくらげなど)
を積極的に摂りましょう。また同じ姿勢が続いたら、数時間ごとに休憩をとり、軽いストレッチをしましょう。
【水滞タイプ】
体内の水分代謝が不調になって、体に水が溜まったことで起こる冷えの症状です。水は下半身に溜まるもので、下半身の冷えが強いことが特徴です。
※改善のポイント
食生活を見直して、冷たい飲食物はなるべく控え、胃腸を温める消化の良い食物を積極的に摂りましょう。また、水分の摂りすぎはむくみによる冷えを強めます。さらに、水分を溜め込む塩分も節制しましょう。体内の水の代謝をよくするために、適度な汗をかく有酸素運動、半身浴なども効果的です。
【エネルギー不足(脾)タイプ】
脾は、胃腸などの消化器官に関連し、食べ物の消化、吸収をコントロールしています。
不規則な食生活やストレスにより、胃腸が疲れて消化吸収の働きが悪くなり、体内でのエネルギー生成ができないことで起こる冷えの症状です。まずは、胃腸の働きを改善することが重要です。
※改善のポイント
食生活を見直し、冷たい飲食物はなるべく控え、胃腸を温める消化の良い食べ物
・かぼちゃ、さつまいも、じゃがいもなどの芋類、米、とうもろこし、大豆などの黄色いもの
・豆類や芋類、黒糖や果物などの甘いもの(砂糖は含みません)
を積極的に摂りましょう。
【エネルギー不足(腎)タイプ】
腎は、生命エネルギーを貯蔵する働きがあります。
腎の働きが低下し、体を温めるエネルギーが不足してしまったことにより起こる冷えの症状です。新陳代謝が低下して、エネルギーを生み出せないため、夏でも冷えることがあります。
※改善のポイント
全身浴や半身浴で体全体を温めて新陳代謝の機能をあげましょう。生姜やネギ、ニラ、にんにく、羊肉、豚肉などの全身の冷えを追い出す食材をうまく取り入れていきましょう。また、黒豆、黒ごま、昆布、ワカメ、ひじきなどの黒い食べ物も積極的に摂りましょう。
冷えを改善して免疫力をあげよう
あなたの体質がおわかりいただけたでしょうか?
このように、冷えにも一人一人の症状や体質が異なるのです。自分にあった改善方法で、冷えを解消していきましょう。
また、体を温める食材があるいっぽうで、体を冷やす食材もあるのです。
主に、冬に収穫されるものや、寒い地方で栽培されている野菜は体を温め、夏野菜や南国で作られる野菜は体を冷やす効果があります。
冷え性の方は、体を冷やす食材である、トマト、ナス、きゅうり、バナナ、スイカなどの量よりも、体を温める食材である。
生姜やネギ、ニラ、にんにく、羊肉、豚肉などを積極的にとりましょう。
そして体質関係なく、冷え性の方は、生活習慣から改善していきましょう。改善したい生活習慣は、4つです。
① 胃腸に負担をかけないようにする
胃腸に疲れがたまると、消化吸収が悪くなり、エネルギーがうまく生成できないため冷えが起こります。また、余分な水分がたまるため、むくみから冷えやすくなります。不規則な食生活、暴飲暴食を避け、温かく消化の良い食べ物をとり、よく噛んで腹八分めを心がけましょう。
② 心と体を緩めて血行をよくする
ストレスで心と体に緊張が続いたり、同じ姿勢が続くと血の巡りが悪くなり、冷えが起こります。ストレスを解消することも冷え体質改善のポイントになります。
適度な運動で気分転換をしたり、ヨガやストレッチで滞った血の巡りをよくしましょう。
③ 冷えをためないようにする
お風呂はシャワーで済まさずに、ゆったりと浴槽につかり、体を芯から温めましょう。ゆずなど温め効果のあるものをお湯に浮かべることも効果が上がります。
④ 朝のスタートが肝心
朝の陽気は体を温め、エネルギーを貯蔵するために大切です。早寝、早起きを心がけ、起きたら体に朝日を浴びましょう。朝食は抜かずに、なるべく温かいものを食べましょう。
日々の生活では、体を冷え性にしてしまう要因がたくさんあるんです。
このような、冷えに導く生活習慣を見直し、免疫力をあげて、健康な毎日を送りましょう。
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